恋のはじまりは曖昧で

『あー、その人の周りの友人とかは見てる可能性はあるかも。さっきみたいにね。でも、その写メがネットとかで拡散されることはないんじゃない?』

「どうして?」

『だって、さっき近藤さんが削除させてたし。もし、拡散されたとして、その写メの存在を近藤さんとか知ってるんだよ。犯人を特定出来るから経理の人も下手なことはしないでしょ。まぁ、バカじゃなければの話だけど。それに私だってその人の顔を見てる訳だし、追求は出来るよ』

「そっか」

頼もしい薫の言葉にひとまず安堵する。

『あ、そろそろ昼休みが終わるからまたね』

「うん。教えてくれてありがとう」

電話を終え、はぁと息を吐いた。
そんな写メが撮られていると思わなかった。
もし、その話が田中主任の耳に入ったらどうしよう。
ちゃんと説明しないといけないよね。

でも、いきなり海斗に抱きしめられたところを写メで撮られたなんて言えない。
そこに至るまでの過程も話さないといけないことになる。
海斗に告白されたとか自分からは言える訳ないし。
あー、もうどうしたらいいんだろう。頭を抱えてしまう。

考えすぎて思考回路が停止寸前だ。
最終的に、様子を見てから話した方がいいかもという結論にたどり着いた。
嫌なことは先伸ばしにしようという、自分の弱い心には勝てなかった。
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