恋のはじまりは曖昧で
『それでね、その後がカッコいいの。広報部の近藤さんているでしょ。その近藤さんが『社員のプライベートを勝手に盗撮するなんて悪趣味にもほどがある。誰がどこでどうしようと君には関係ないことだろ。ネタだと?よくそんな最低なことが言えるな。逆に自分がされたらどう思うんだ?その画像は今すぐに削除しろ』って言ったんだよ』
薫は興奮しながら言う。
『経理の人は慌ててスマホをしまってバツが悪そうな顔して広報部のフロアから出て行ったけどね。ホント、悪趣味なことをする人もいるのね。で、真相はどうなの?』
今、悪趣味って言ってなかったっけ?
薫は興味深々に聞いてくる。
「多分だけど、その写メは私と幼なじみの男性が写ってたと思う」
『幼なじみ?』
「うん。ちょっとよろけたのを支えてもらったところを撮られたのかも」
そう言いながらスマホをあてている反対側の耳を無意識に触る。
薫に嘘をついてしまったけど、この場合は嘘も方便てことで許してもらおう。
それに、やましい気持ちなんてこれっぽっちもないから。
『なぁんだ。彼氏じゃないのか』
「うん」
薫はがっかりしたと言わんばかりに「つまんない」と呟いた。
それが本音かよー、と苦笑いしてしまう。
「でも、その写メって他の人も見てるのかな?」
それが広まったりしたら……考えただけでゾッとする。