グッバイ・メロディー
「さすが、はなちゃんには筒抜けなんだね……」
「嫌ってほど共通の知りあいだらけだからね」
イヤ、の部分をこれでもかというほど強調して言った。
中学時代は男女それぞれのカーストトップに君臨し続けていたアキくんとはなちゃん。
性別を超えて人気者だったふたりには、同じ友達がいまでもたくさんいる。
「べつにちゃらんぽらんなのは昔から知ってたし、それは大いにけっこうなんだけど。最近はちょっと目に余るらしいじゃん。どんだけ遊びまわっても、女の子を泣かせるようなマネだけはしないと思ってたのにな」
「え……そんなにひどいの?」
「瀬名くんから聞いてない?」
こうちゃんはあまり人のことをべらべらしゃべったりしない。
わたしが聞かない限り、いつも自分からはなにも教えてくれない。
「少なくともいまは人前に出るようなこともしてるわけだし、瀬名くんたちにも迷惑かけちゃうことになるかもしれないのに。なにしてんだか」
わたしの胸にふたり分の“甘味サービス券”を押しつけ、盛大すぎるため息を残すと、はなちゃんは駆け足で行ってしまった。
さっそく他校の制服を着た男子に話しかけられている。
にこりともせず冷たくあしらう姿をさすがだと思いながら、わたしもこうちゃんの教室へ向かった。