グッバイ・メロディー


体育館ステージの使用権を抽選で勝ち取った2年5組は、『男女逆転の白雪姫』なんていう最高におもしろそうな演劇をするのに、恥ずかしがりやさんの幼なじみはやっぱり裏方にまわったらしい。

大道具係の仕事など当日にはひとつもなく、とっても暇そうなこうちゃん、きょうは夜までずっとフリーだって。


「じゃああとで家庭科部の茶屋いこうよ。はなちゃんがこうちゃんの分もサービス券くれたよ。あんころ餅あるって」


チョコレートと生クリームにならび、あんこも大好物の甘党大魔神の目が一瞬にして輝いた。


「季沙、時間は? 2組ってなにしてるんだっけ」

「ホットプレートでフランクフルト焼いてるだけー。交代制だからほとんど好きにしてて大丈夫なの」


それぞれのクラスや部活の出し物をてきとうに見てまわった。

うちの高校の学園祭は一般公開もしているので、他校の制服を着た人や、これから入学してくるかもしれない中学生もわんさかいる。


「あー! いた! 瀬名さん!」


地元で決して無名じゃないバンドマンをやっているこうちゃんは、やっぱり黙って歩いているだけでたびたび知らない人から声をかけられた。

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