星空と君の手 【Ansyalシリーズ 託実編】



「託実、まだ……辛いの?」



気遣う様に俺を見つめる裕真兄に、
俺は視線を反らすように窓から外を眺めた。



「俺は大丈夫だよ。
 ほらっ、なんつーか、LIVEの後で感傷的になっちまったって言うか。
 それより、裕真兄は?」

「こっちは急変待機で仕事中」

「裕【ゆたか】兄は?」

「まっ、あの人はどこ吹く風だから。
 今は海外じゃないかな?」

「んじゃ、裕兄の友達の直弥【なおや】さんとか?」

「直弥は海外研修」


俺が知る限り名前を出して会話をやり過ごす。


「託実、今から上においで。

 新しい茶葉を手に入れたから、
 ティータイムにしよう。

 その後、上のベッドで眠るといいよ」



裕真兄に誘われるままに、
理佳が昔過ごしたその病室を後にする。
 





今も、
この場所に足が向く。






温もりが、
恋しくなったら。









だけど……温もりが恋しくなるのは、
それだけじゃない。




Liveの時には、
いつも俺に真っ直ぐに視線を向けてくる、
ファンの女の子。

百花ちゃんの姿が理佳と時折重なるから。


だから……無性に餓えるんだ。 






貴女は今も俺にとって
忘れられない君だから。







……理佳……。

君は今、
そっちの世界で何してる?


< 18 / 253 >

この作品をシェア

pagetop