こんぺいとう
昨夜はホテル内のレストランで済ませた由月だったが、今入った店は地元の人だけが来そうな小さな店。
二人して片言な英語でどうにか注文を済ますと、あり得ない量が運ばれてきた。
「これ…二人前…??」
思わず笑う二人。
とにかくお腹が空いていた二人は勢いよく食べ始めた。
「どうしてサイパンに一人旅に来たの??」由月は純がピザを飲み込むのを待って聞いた。
「本当は祖父と来たかったんだ。祖父のお兄さんが戦時中にサイパンで戦死して、毎年祖父がお参りで来てたんだけど、祖父が今年入ってすぐに病気で亡くなっちゃって。おじいちゃん子だったから、よく話を聞いていたから、代わりに今年は俺が来た。」
純の言葉を聞いて、由月は「偉いな」と思った。同年代であまりこういう行動を起こしている人は少ない。
「由月は??」
聞かれて少々恥ずかしくなったが、正直に「何となく」と言い、更に日本で見た写真の事が気になった事も伝えた。

それからはお互い日本でどんな仕事をし、どんな生活をしているのかを話した後、二人でビーチを歩き、お酒を飲んで、お互いのホテルへと戻って行った。
海外で偶然仲良くなった一人の男の子。
ただ、それだけのはずだった。
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