夫婦ですが何か?
夫婦とは・・・
ーーーFIRST MORNINGーーー
体内時計はわりと正確に出来ている。
目覚ましが鳴るよりも早く目蓋を開けると、一瞬見慣れないシーツの色に困惑した。
でも一瞬。
そんなに記憶力が危ういわけじゃなく、すぐに自分の置かれている現状を思い出すとのそりと体を起こした。
すぐに体から布団がポスリと滑り落ち、昨夜勢いで晒した肌に朝の肌寒い空気が触れる。
寒さを誤魔化す様に両腕で体を包むように腕を擦ると、そのまま視線を隣の塊に向けて見つめてしまった。
そっと近づき覗きこんでしまったほど。
あら・・・これは意外。
見降ろした姿は布団のぬくもりに無防備な寝姿を晒す年下の上司で昨日からの旦那さま。
小さく寝息を立てるその表情は軽く眉尻下げた普段じゃ見れない様な愛らしい物。
子供の様だな。
いや、中身も単なる悪ガキか。
そんな風に自分の意見に納得すると一応起こさない様にベッドを抜けて、隣接するもうそこが一つの部屋の様にでかいクローゼットに入りこむ。
かといって自分の衣服の少ないこと。
スーツとシャツが何着かあり、後は微々たる私服の数枚。
かといって古びてボロボロなわけじゃなくある程度着回し、程々になれば新調しているから外見的問題はない筈。
そうして今日も私服より着なれているスーツに身を包むと、すぐに思い出したように上着は脱いだ。
そうだそうだ。
形ばかりに夫婦と言っても、契約している間はそれなりに妻としての本分を果たさなければ。
無駄に広いそこから抜けて足音立てずに寝室を抜けるとリビングダイニングに向かう。
脱いで腕にかけていた上着を近くの椅子の背もたれに預けるとキッチンに向かい、エプロンを手にするとスーツ姿にそれを纏った。
そして冷蔵庫を開ければ何もない。
ーーーわけではなく、昨日ちゃんと今朝の分くらいは食材を買い出ししていた私。
昨日から予定していた朝食を頭に浮かべながら手なれた感じに調理を始めた。
もともと1人暮らし。
毎日ではないけれど時間がある時はきちんと自炊はしていた。
だからこんな風に突如誰かの奥様になったとしても困らない程度に料理は出来る。
そうして包丁で手を切る様なハプニングも無く、着々と空腹を煽る匂いを漂わせた朝食を完成させていった。