夫婦ですが何か?



「どんな理由あってでも、千麻ちゃんは今は俺の妻なわけだ。そしてそれがどんな関係であっても俺は独占欲がそれなりに強い」


「・・・・・」


「だから・・・・・、自分の物である千麻ちゃんに他の男が近寄るのも近づくのも絶対に許さない」



微笑みながら狂気的な発言をした彼が示す様に私の服に触れると。



「こんな風に・・・・他の男の気配も許さないから。・・・・・しっかり記憶してよね?ハニー」




ああ、怒りのポイントは・・・・こんな物だったのか。


本来、普通の他者であるなら今の気迫に負けて呑まれてもおかしくないのだろう。


でも・・・、あなたもまた私を舐めておられますか?


今更あなたの気迫に言い負かされる私だとでもお思いですか?


妖艶で意地悪な笑みを携え威嚇するように見降ろしていた姿を、一息溜め息をついた後にグイッと押し返す。


さすがに予想外だったのかされるがまま押しの力に負かされ後ろに手をつくように座りこんだ姿が驚愕の表情で私を見上げる。


そう、見上げる。


押しのけすぐに膝立ちになり彼を見降ろすと、呆れた表情で鼻を鳴らし、そしてーーー、、




「・・っ・・・・・」




「・・・・そんな小さな問題。・・・・・・コレで満足でしょうか?」



私の行動に見事してやられた感じに絶句し、もっと言えばポカンと驚愕に染まる彼。


そんな彼に手に持っていた物をバサリと投げると羞恥心も無く布団に身を投じ始める。


何てことはない。


着ていた問題のシャツを目の前で脱ぎ捨て欲も働かないであろう裸体を晒しただけの事。


まぁ、パンツは穿いていたけれど。


理由?


そんなの・・・眠かったから。


こんなシャツ一枚で永遠に彼に責められるのも面倒だと行動しただけの事。


そして完全に布団に包まればその心地よさに口の端も上がりそうな程。


だけどそうなる前に耳に響く驚愕ばかりの彼の声。



「ぬ、脱ぐぅ?えっ、しかも・・・ちょっ、寝るわけ!?」


「お休み、ダーリン・・・」


「うわっ、何?すっごい棒読み!!ちょっ、マジでますます抑制無理だってぇーーー」


「・・・・・」


「千麻ちゃぁん!!俺と千麻ちゃん夫婦でしょ?ねっ?ねっ?」



ああ、もう・・・面倒な。


ムッとして体を起こすと少し乱れた髪のまま彼を振り返り眉根を寄せ不満げに睨むと、怯んだ感じの彼が言葉を待つように息を飲んだ。



「夫婦ですが・・・何か?」


「ええっ・・・」


「もう眠いんですよ。夫婦ごっこは別の機会に、」


「じゃ、じゃあせめて・・・名前くらい呼ぼうよ・・・、さっきから副社長って・・・」


「呼んだら寝かせてもらえるんですか?」


「・・・そんなに俺が嫌いですか?」


「・・・・・・おやすみなさい。茜さん」



暗に起こすなと睨みと念を押してそう口にすると布団にもぐりこんだ。


さすがにもう声をかけてこなかった彼だけれど深く深く溜息ばかりは響かせる。


そんなの関係ない。


上司の小言は仕事の範囲。


そうして私に唯一優しいベッドの感触に満足して眠りについた。







それが私と彼の新婚初夜。











夫婦ですが何か?



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