あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。
こんなに理不尽な目に遭ったっていうのに、何もかも『仕方ない』で済ませてしまう。




そんなの、受け入れちゃいけないのに。



どうして怒らないの?





この時代の人たちは、とにかく何でも『仕方がない』という言葉で黙って受け入れてしまう。




家を奪われても、大事なものを焼かれても、家族の命を奪われても。



死んでしまった家族の前で涙を流して嘆く人はたくさんいたけど、理不尽すぎる仕打ちに憤る人は一人も見なかった。




本当に、そう思ってるの?



『仕方がない』って?




大事な人の命が奪われたのに?





あたしにはどうしても理解できなかった。




………特攻隊に志願した、彰たちの気持ちも。




自分の命を『国のため』に犠牲にしなければならないことを、『仕方がない』で済ますどころか、


誇らしいとさえ考えているらしい彼らの気持ちが、理解できなかった。





そんなことをぼんやりと考えているうちに、最後の挨拶に来てくれた常連のおじさんが席を立った。





「百合ちゃんも元気でなぁ」




「はい。あの……お気をつけて」




「うん、ありがとねぇ」





手を振りながら去って行く後ろ姿を、ツルさんと並んで店の外で見送った。






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