あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。
「………どんどん人が減っていくね」





すっかり淋しくなってしまった町を見ながら、あたしは小さく呟いた。




ツルさんが「そうだねぇ」と悲しげに笑って頷く。





「まぁ、仕方ないよ」






空襲で家を失った人のほとんどは、建て直すお金も無くしてしまって、田舎の親戚の家へ移り住んでいった。





基地や武器工場などがなく、人家も少ない田舎には空襲もあまり来なくて、そういうところに逃げることを『疎開』というらしい。




それならみんな疎開すればいいのに、と思うけど。




慣れ親しんだ土地を出て、たくさんの友人と離れて、仕事があるかも分からない田舎に引っ越すというのは、なかなか決心のつかないことだ。




だからみんな、空襲の不安と闘いながらも、その場所に住み続けていたのだ。




そして、とうとう空襲を受けて、運悪く家を失ってしまった人は、仕方なく一時的に他の土地へ移り住んでいく。




「いつか必ずここに戻ってくる」と言いながら。





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