ひねくれ作家様の偏愛



*****



海東くんのマンションに向かった。
会議の結果と、これから行く旨はすでに電話してある。

熱いくらいの陽射しが少し傾いてきた夕刻、彼のマンションにたどり着く。チャイムを鳴らしてから、いつもどおりドアを開けた。


「海東くん」


奥に向かって声をかけた。
返事はない。

私はリビングと仕事部屋に海東くんがいないことを確認し、仕方なく寝室のドアをノックした。


「海東くん、いるんでしょう」


相変わらず返事はなかったけれど、中に誰かいる気配はした。
迷いつつ、「入るよ」と声をかけてノブを回す。

その寝室に入ったのは例の夜以来だった。
あらゆる本が乱雑に詰まった書架、濃紺のカバーがかかったセミダブルのベッド。

海東くんがそこにうつ伏せで転がっていた。
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