アブラカタブラ!
(二)電車
 電車を目にした息子の目が、キラキラと輝き始めた。
絵本で知るそれとは違い、グンと押し出しのある本物の電車だ。

「あのでんしゃにのるんだね」

 ワクワクした思いが、体全体に現れている。
走り出したい気持ちをグッと抑えているのだろう。
母親の言葉をしっかりと守っている息子を見ると、その素直さに腹立たしさが湧いてきた。

“子どもらしさが、男の子特有のやんちゃぶりが、ないじゃないか”

息子との車内の会話が、どうしても紋切り調になってしまう。
「保育園は楽しいか」
「友だちはいるか」
「給食は美味しいか」

 それら全ての問いに対して「うん」とだけ答える息子で、あとが続かない。
妻との会話では、笑いが絶えない息子なのに。
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