オフィスの華には毒がある

*****


「おめでとう」


目の前に急に表れた、沢山の薔薇の花束。


真っ赤じゃなくて、わたしが好きな柔らかいピンク色。


そうそう、かすみ草も大好きだから沢山あって嬉しい。


その向こうから見えた顔には……優しげに、何故か少し悲しげに光る、ほんのり色素の薄い瞳。

無造作にまとめられた髪の毛は、柔らかそうで。


「しゅ……にん?」


思わず出たわたしの台詞を受けて、困ったように笑う。


「だから、こっちモードの時はその呼び方やめろって言っただろ?」


伸びてきた手は、指が細くて意外と綺麗で、それが何だか妙にセクシーで。


わたしの頬にそっと触れる。

いとおしそうに、優しく。


「……そうでした」


えへへ、と笑える自分にびっくり。わたし、こんな笑い方したの、いつぶりだろう。
< 112 / 312 >

この作品をシェア

pagetop