カフェには黒豹と王子様がいます
第二十四章 ひとつめのさよなら
第二十四章 ひとつめのさよなら


 退院しても声が出ないので、バイトに行けなかった。

 親からも実家に帰ってきたら?というメールがあったが、誰とも会いたくない……それが本音だった。

 学校が春休み中でよかった。


 家には時々元子さんが顔を出してくれる。

 ほっといたら何も食べないんじゃないかと心配して、おかずとかをタッパーに入れて持って来てくれたりする。

 今日は、「ドックセラピーよ」と言って、シュガーちゃんを連れてきてくれた。

 シュガーちゃん、元気になったんだ。

 モフモフで、ぬいぐるみみたいなシュガーちゃんは、人懐っこくてとてもかわいかった。

「一度、店に顔出しなさい。マスターのケーキとコーヒーを飲んだら、声が出るようになるかも?」

 ありがたいな。

 ただのバイトの私にこんなにやさしくしてもらって、罰が当たりそう。

< 209 / 443 >

この作品をシェア

pagetop