大きな河の流れるまちで〜番外編 虎太郎の逆襲〜
第2章 盛夏

サッカーの試合で

また、2週間過ぎた。あやめは明らかに僕を避けている。
オトナたちはきっと、気づいてるはずなのに、間に入る気配はない。
僕は再び始まった、サッカーに没頭した。朝早く起きて、川沿いをランニングしてから学校に行くことが日課になってきていたが、あいにく今日は雨だ。多分、この時間はリュウと、壮パパはジムにいる。気が進まないが、仕方がない。
ナナコに、ジムに行く。と言って、カードキィをもらって、1階の奥にあるジムに向かう。案の定目立つ2人はバイクマシンの前列に並んでいた。身長180センチ以上あって、イケメンと呼ばれる彼らの両隣はポッカリ穴があいたみたいに誰も近づけない。まあ、隣に並んで見劣りしない自信がある奴らは滅多にいないんだろう。出来れば、僕も避けたいところだ。でも、挨拶もしないで、マシンを使い始めたら、きっと、後から、リュウに小言を言われるのは、目に見えている。僕は、壮パパはの後ろに立ち、
「おはようございます。」と声をかける。壮パパは、振り向いて、ニッコリする。きっと、女子だったら、顔を赤らめてしまうような、完璧な笑顔だ。
「午後に部活もあるのに、朝も走るんだ。感心だね。」と言う。僕は、
「今度の土曜日新人戦があるから。…そこで、活躍出来れば、試合の時、声をかけてもらえるかもしれないし…」とモゴモゴ言うと、リュウが、横から、
「ふーん、新人戦って、1年生全員漏れなく試合に出られるってことぉ?」と、確認する。僕は頷きながら、全員漏れなくで、悪かったね。
僕はまだ、選抜メンバーの候補にもなってない。今度の試合は、コーチにアピールできるチャンスだ。と心の中でつぶやく。リュウは、
「煩悩を振り払うには、運動に限る。俺も、手強いナナコを落とす前は、夜中に走ったもんだ。」と、訳知り顏でうそぶく。壮パパは笑って、
「その半分以上は、俺とホテルのBARにいたんじゃないか?」と訂正を入れる。リュウは、
「俺が、せっかく、反抗期の息子にアドバイスしてるんだから、ちゃんと、協力しろ。」と壮パパを睨んでから、笑い出す。僕は、相手にせず、背を向け、ランニングマシンに向かった。
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