汝は人狼なりや?(※修正中。順を追って公開していきます)
 どれくらいの時間が経っただろうか。一瞬のような気もするし、かなりの時間が経ったようにも思える。どちらからともなく、ふたりはそっと離れた。

 別れを惜しむように見つめ合うふたりは、愛や絆をこえたもっと特別な何かで繋がっているんだと思う。

 由良城さんは……これから、どうする気なんだろう。彼女の中で、答えはもう見付かったのかな。

 ふたりのこれからの言動を見守っていると、由良城さんが動いた。野々宮くんに背を向け、僕を含めたクラスメートたちを順番にゆっくりと見回す。


「私の未来は、みんなに託すことにします。犬飼くんが言ってくれた通り、狼谷みたいにロープで行動を縛ることにも従うし、自害した方がいいって言うなら……その判断に従うつもりです」


 ……その発言に、どれほどの勇気がいっただろう。

 如月さんを食い殺した罪は、もちろん重い。さっき、過去にもたくさんの人間を食い殺してきたと明かしていたから、由良城さん自身が死ぬことは仕方がないことなのかもしれない。

 僕は生きたまま罪を償ってほしいと思うけれど……よく考えたら、そもそもの話、生きてここを出た時に人狼に人権なるものが存在するのかは……分からない。もしかしたら、問答無用で排除されてしまう可能性もある。

 結果はどうあれ、由良城さんにとって良い結末などは用意されていないだろう。

 野々宮くんは歯を食いしばり、悲しそうな……これからの良くない行く末にどうしようもないという悔しそうな目で、由良城さんの背中を見つめている。もしかしたら、無理やり平常心を保とうとしているのかな。唇を噛んでいることがその現れのように思えた。
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