汝は人狼なりや？（※修正中。順を追って公開していきます）

「さ、とり……」


　野々宮くんはその言葉にショックを受けたようで、一瞬あ然としたけれど、すぐに何かに気付いたようで怒りに声を震わせた。


「お前……ただでさえ嘘つくの苦手なのに、こんな時に下手くそな嘘をつくんじゃねぇよ……っ」

「嘘なんかじゃ……っ」

「俺のことを本当に非常食だと思ってるヤツが、いちいち謝ったりなんかするかよ……っ！！！」


　野々宮くんの言う通りだ。あっさりと嘘だと見破られて、あからさまに動揺している様子を見ても、由良城さんの放った言葉は嘘なんだと僕でも分かる。

　彼女なりに考えた、わざわざ野々宮くんを突き放すための嘘なんだとは察しがつくけれど、そんな嘘じゃ突き放せないほど……野々宮くんが由良城さんのことを想っていることは明白だ。


「そこはっ……黙って……騙されててよ……っ」


　堪えていた涙が、言葉と共に溢れ出す。それを隠すように、由良城さんは再び野々宮くんの胸元に顔を埋める。すかさず野々宮くんは華奢な身体に腕を回して抱きしめた。


「さとしっ……人狼として生まれてきて、本当にごめんねぇっ。聡志と一緒にいる間だけでも、わたし、ちゃんと人間になれてたかなぁ……っ？　上手に、化けれてた、かなぁっ？」

「そんなの、聞くまでもねぇだろうが……っ。さっきも言ったけど、人間だろうが人狼だろうが、慧は、慧だ……っ！」

「ぅんっ……うん……！」


　しばらくの間、ふたりはそうして同じ時間を共有していた。

　ふたりのことを見ていたら、とても間に入って邪魔をすることなんて出来ない。さっきまで色々と酷い言葉を投げ掛けていた夜桜さんも、さすがに黙って俯いていた。