汝は人狼なりや？（※修正中。順を追って公開していきます）

「あぁー……。ひとつ、心残りだったなぁ」


　誰かに言い聞かせるわけではないらしく、由良城さんは小さな声で、天を仰ぎながら呟く。

　それでも、静まり返った部屋の中、由良城さんが何を話しているのかは誰にとっても明確なことだった。


「どれだけ上手に人間に化けて、上手に人間社会に紛れ込めているって思っていても。本当はこんなのおかしいって、分かっていても……」


　顔にかかった髪でどんな表情をしているかまでは分からなかったけれど、震える声音からは充分に察することが出来た。


　彼女は、この世界でいうところの〝普通〟を、強く、強く望んでいた。

　この世界で何が〝普通〟なのか分からないというのに、〝普通〟だと思って生きている自分がＳＨＷに命を狙われている側だと知り、幼い頃から違和感があったんだろう。──自分は本当に〝普通〟なのか、って。

　だからこそ、自分が思う〝普通〟であろうとして、人間に化けることを手探りながらも学び、人間社会に紛れ込もうとした。

　少しでも〝普通〟に生きやすくするために。
　少しでもこの世界の〝普通〟に見合うために。
　少しでも周りから〝普通〟だと思われ、その信用や信頼を勝ち取るために。

　……少しでも、〝普通〟の〝ひとりの人間〟として、野々宮くんの隣にいるために。

　ＳＨＷにバレないように努力し、すべてひとりで背負い込み、それなのに今回……こんな意味の分からないゲームにいきなり参加させれて。人狼としての気持ちを抑え込んでいたけど、精神的に限界だったから……我慢が、きかなくなった。


「──やっぱり、本物の人間(聡志と同じ)には、なれなかったよ」


　彼女はきっと、自分の人生(歩んできた道)を悔いている。

　最後まで自分を信じる〝普通〟を押し通せなかった、自分自身のことを。

　ひとり、悔いている。