【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「君のお父さんは笑里の件で世話になってるし家に置くことは説得出来ると思う。お母さんの方も、子供だけじゃどうにも出来ないだろう?だから、僕がついて行って説き伏せるよ」


ニコニコと、こちらまで気の抜けるような笑顔の父親の表情と言葉に、顔をぐしゃぐしゃにして泣き出したのは成本人ではなくやはり里佳子だった。


「ミキもオトンも何なん!無関心のふりして何なん!うあー!」


「あーもー、リカちゃんが泣いてどうするの。リカちゃんが泣いちゃったせいて成が泣けてないじゃないか、ははっ」


あまりの号泣っぷりにぎょっとしている成と苦笑いしながらもあやすように背中を摩っている燭に、私とルイ、それから父は互いの顔を確認して、ふふ、と笑ってしまった。


「笑里がこんな風に笑えるようになったのも、誰かの心配が出来るようになったのも君達のおかげなんだね。だったら、僕も出来る事をしてあげたいから」


父の言葉に、里佳子は更に涙を垂れ流し、成の頭をがしりと掴み、自分の頭と共に成の頭を下げた。


「こ、コイツ、コイツの事……!頼みます!アタシには何も出来ないから、よ、よろ……!」


誰かの為に必死に泣いて頭を下げれるだけで本当はとても凄い事なのに、里佳子はそれを簡単にやってのけてしまう。


それこそが、成だけじゃなくて私の救いでもある。


神様なんて虚像かもしれないけれど、私の周りには神様が溢れているようにしか思えない。


誰にも悟られぬように私に触れて涙を流し始めたルイ。その綺麗にホロホロと落ちる雫は、彼の心であり、私の心に直結しているような気がした。
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