【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
冷静に考えれば当たり前だ。私の罪は隠し通す事なんて出来ない。一生私と共にあるものなのだから。


「……行きますよ。罪を背負う事が、私への一番の罰だと思っていますから。逃げません」


答えを聞いた美樹は、渋い顔をしてタバコを唇に挟み込む。


「聞いていた通りなんだな。……いいか笑里。お前は一番大事な事を忘れている。お前に罰なんて無いという事だ。罪なんて、そんなもの存在しないんだよ」


「何を仰っているのですか?何を……」


美樹の言いたい事が分からない。私の犯した事は罪だ。何よりもやっては行けない事をしたのに。


痛い。頭が割れそうだ。凄く、嫌な感覚に支配される。


「お前を守る為だか何だか知らんが周りの大人はお前がそのままで良いだなんて思ってる。だが、お前は真実を知らなきゃならん。いつまでもこのままなんて、させないよ」


真実なんて、私が犯した罪以外に何があると言うの?美樹は、何を知っているの?


「とりあえず、今すぐとは思っちゃいない。だから……ルイ、ちゃんと笑里の傍にいてやれ」


最後の煙を吐いた美樹は、携帯灰皿にタバコを押し付けて、ルイの肩を叩いた。


ルイは黙って頷くと、私の手をしっかりと握り、そして、またひと雫、ホロリと落とす。


このひと雫に、何の意味が、どんな真実が、どんな想いが篭っているかは分からないし、本能的に知りたくないと言う私がいる。


鳴り止まない頭痛は、不愉快極まりない。
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