最強甘々計画

計画その五 手作りの方が効果的!?



 ここ最近の街の雰囲気は、年に一度のお祭りに向けての一色となっている。オレンジと紫と黒を中心とした、独特の色合いが目立つ。


 ショーウィンドウのいたるところに、くりぬいたカボチャの飾りが置いてあった。ジャック・オー・ランタンと言ったかな。


「そっか、明日はハロウィンか」


 仕事帰りに、同じ歩幅で繁華街を歩いている塩河さんが呟く。


「ハロウィンって、十月三十一日にやるんですね。今年はちょうど、土曜日だ」


 小学生の時、授業の一貫で、ハロウィンパーティーをやったことがある。私にとってハロウィンとは、家に持ち帰ったお菓子をまるごと母親に渡す、そんな単純作業でしかなかった。


「ままれちゃんの甘いものの克服だけどさ、自分で作った方が愛着も湧いて、市販のより美味しく感じられるんじゃないかな」


 塩河さんがふと、歩く足を止める。


「ままれちゃん。俺の部屋で一緒に、お菓子を作ろうか」


「えっ……?」


 塩河さんからのまさかの自宅への誘いに、私の神経が過敏になる。誠実な塩河さんであるし、そこに下心はないはずだ。しかし付き合っていない男の人の部屋に、すんなりと上がっていいものなのだろうか?


 いや私、何を戸惑うことがあるのだろう。塩河さんとこのまま親密な関係になったとしても、全然嫌じゃない。塩河さんとの間に既成事実があっても、いいと思ってる――。


「……はい、ぜひ」


 私は首を縦に振る。


「でも私、お菓子は作ったことがないです」


「普段料理をしてるなら、苦手意識を持たなくて大丈夫だよ。あるものを使えば、すごく簡単だから」


 あるものって何だろう。こないだの最中で弾みがついた分、甘いものへの好奇心は強くなっていた。


「今から俺の部屋に、行こうか」


「それでは、よろしくお願いします」


 私たちはまた、ゆっくりと歩き始める。
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