イジワル同居人は御曹司!?

2. 兄を攻略せよ

翌朝

私はフラフラした足取りで会社へと向かう。

朝から一騒動あったもんだから出勤する前からぐったりだ。

まさか、あんな事になるなんて…

脳裏に苦い出来事が浮かび上がる。


6:00

時間通りに携帯のアラームで起こされた。

私は半分目覚めていない状態で階段をよろよろと降りていき、洗面所へ向かう。

そのまま脱衣所のドアを開けると腰にバスタオルを巻いた裸の男性の姿がそこにあった。

余分な肉が見当たらない引き締まった腹筋に、逞しい二の腕と肩。

くっきり浮かび上がった鎖骨がなんとも艶かしい。

こんな幻覚をみるなんて…

「欲求不満なのかしら」私はボソリとつぶやく。

「藤田さん、ドアを閉めてもらえますか？」

幻覚に声を掛けられる。

濡れた髪に端正な顔立ちをしており、この完璧な肉体に相応しい。

「ああ…ごめんなさい」

私はパタリと扉を閉めた。

幻覚が喋った。

しかも何で私の名前知ってるの？

そこでようやく私は我に返る。

「いーーーやぁぁぁぁ！」

次の瞬間、古い日本家屋に私の絶叫が響渡った。