気になるパラドクス

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毎月の中頃になると、取引先に持っていく見積りや契約書が混在して、些細なミスも増えてくる。

それをフォローしながら、仕事の割り振りし直して捌き、通常業務をこなしていく。

「村居さん。今日、飲み会あるんですけど、参加されませんか?」

後輩のひとりに声をかけられ、ちらりと彼女を見た。

「どこと?」

「……大学の、もと先輩からのお誘いです」

「30代の女が行っても問題ないわけ?」

ファイルを閉じて、次の書類を手にしていたら、彼女はこそっと顔を近づけてくる。

「彼氏と別れたって聞きましたから。それに今回は相手も30代の半ばだと聞きましたし」

「合コンなら、若くて綺麗な子の方がいいでしょ」

書類をめくっていると、何故かにんまりとされた。

「大丈夫です。村居さん美魔女ですから」

……美魔女って。

「持ち上げても、残業になる時にはなるよ?」

「持ち上げてませんって。この間、夜残業されていた時に見ましたよー?」

この間? 最近の残業で、夜まで残業でって……まさか。

手を止めて、恐る恐る彼女を見た。

「な、何を見たの?」

「髪を下ろして、少しだけお化粧変えてましたよね? アイラインも引けばバッチリ美魔女の出来上がりです」

真剣な顔をして親指を立ててる後輩に、少しホッとして肩を下ろす。
まさかの、黒埼さんとのキスシーン見られたのかと思ったよ。

「私、普段着だし、メイク道具なんて持ってないけど?」

「お化粧品なら貸します」

力強く言われて、手で追い払う。

「私は飲むつもりで行くからね」

まぁ。引き立て役になってあげようじゃないの。
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