それから二時間後――。
私は緊張しながら御影さんがお点前をするお茶室に足を踏み入れた。
千歳さんの指示通り、初心者には無理だと言われる『正客』と『末客』の席を免れて、無難に四客目の席につくことが出来た。


それほど広くないお茶室にちょこんと正座して、豪華な着物をまとった周りの面々を窺い見ながら、割と年のいった品のある女性が多いことに驚く。


御影さんはあれで超絶イケメンだし、格式ある茶道お家元の嫡男となったら、そこ目当ての若い女性が多いかと思っていた。
彼の魅力は、あらゆる年代の女性に効果ありなんだろうか。


この茶室に佇む人たちは、明らかに茶道の道を心得ている人ばかりで、私のような付け焼刃の素人なんかきっといないはずだ。


本家の賓客ということは、もしかしたら、同業・同門の部類の人たちかもしれない。


そんな中、千歳さんのチョイスのおかげで、立派な着物を着せてもらって、見た目だけならそれほど場違いではないにしても、場の空気にのまれておどおどした私は目を引くのだろう。


ちゃんとお作法通りに席入りしたつもりなのに、なんだかジロジロと好奇の視線を感じる。
やっぱり着物初心者の私じゃ、滲み出る何かが足りないんだろうか。


明らかに場の空気にそぐわないのを感じる。
それでも気にしないように、斜め前の畳の縁ばかり見ているうちに、このお茶会の『お点前さん』である御影さんが席入りした。