俺様当主の花嫁教育
それならば私がやることはただ一つ。
午後の御影さんのお点前に入る前に、一通りの茶道のお作法を覚える。
少なくとも、恥にならない程度に。


私の決意を聞いた千歳さんは、一言、「偉い!」と声を張った。
そして、私の両手をギュッと握って、胸の高さに持ち上げた。


「それなら私も協力してあげる」

「え?」

「志麻ちゃん、バカねえ。言っとくけど御影は私にとっても生家。もちろん私だって茶道の免状を持ってるのよ」


それはそうだろう。
千歳さんは日舞のお家元に嫁いでいるけど、御影家の長女なんだから。
そして、自分でそこに改めて気づいて、ハッとして千歳さんを見つめた。
千歳さんは私の視線に応えるように、ニッコリと笑った。


「大寄せだし、一通り無難にこなせる知識なら短時間でもなんとかなるわ。私が教えてあげるから、いらっしゃい、志麻ちゃん」


力強くそう言って私の腕を取って踏み出す千歳さんに、


「……はいっ!」


私は気を引き締めて元気に返事をした。
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