ビタージャムメモリ
15.偶然

「あはは、いい写真!」

「ほんとだ、これは喜んでもらえるねー」



柏さんからメールで送られてきた、技事の事業所で撮られたプロジェクトメンバーたちのスナップを見ながら野田さんと笑った。

今からこれらを編集して、昨年の技術発表会に来てくれたお客様への寒中お見舞いのハガキにするのだ。


今年の冬休みは、カレンダーの都合でとても短かった。

月曜日、年明け初の出社をすると、取引先さんから山ほど年賀状が届いており、その中にお客様からのものがあった。

夕方にもまた、ぱらぱらと届いた。

宛先が会社代表の住所になっていたりしたものが、回り回ってようやく広報部にたどり着いたのだ。

それを見ていて、もしやと思った私は、開発部門の仕事初めである火曜日に、プロジェクトチームのオフィスに電話をした。



『うん、こちらにも来てますよ、ちょうど今、返事をどうしようねってみんなで話してたとこで』

「やっぱり。それなんですけど、お返事用のハガキを作ろうと思うんです、発表会で撮った集合写真を使って」



電話に出てくれたのは柏さんだった。

相変わらず陽気に、なるほど、と賛同してくれる。



『いいですね、それ』

「それでお願いなんですが、もう少し写真が欲しいので」

『あ、ちょっと待ってね。眞下さーん』



え。

電話の向こうで何か会話が交わされるのが聞こえ、少しして『もしもし』と別の声が出た。



「あっ…先生ですか?」

『うん、明けましておめでとう。年賀状の件、対応ありがとう。無視はしたくないねって話してたところで』



デスクで電話していたので、思わず先生と言ってしまってから、声をひそめた。



「あの、可能でしたら、みなさんの写真をもう少しいただけませんか、職場での風景みたいな感じのを。集合写真と合わせて使いたいんです」

『了解。柏が活躍するよ、カメラ小僧だから。デスクは機密区域なので、別の場所で撮ることになると思うけど』



電話の向こうで、何か言いましたか、と柏さんの声がする。



「すみません、お手数おかけしますが、お願いします」

『もしハガキができたら、一度こっちに回してくれる? あの人数分なら、メンバーから一言ずつ書けると思う』

「えっ、本当ですか、ぜひです!」


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