旦那様は、イジワル御曹司~華麗なる政略結婚!~
ひとつ屋根の下の攻防
【ひとつ屋根の下の攻防】


それから三日後。

私の心は荒れに荒れていた。雑草一本生えない荒野のようだった。なぜって。


「この階から一歩も出ることは許さない。いいか、一歩もだ。それから外部と勝手に連絡を取ることも。分かったな」

「こんなの監禁じゃん!!」


花嫁修業と称し、私は結城家が一方的に決めた住居で強制的に暮らすことを強いられていたのだから。



――その申し出があったのは、顔合わせの翌日だった。

『真奈美さんは大変素晴らしい女性ですけど、結城に嫁ぐ責任の重さが少々分かっていないようです。結婚式までの十ヶ月間、こちらでお預かりして結城次期総会長の妻になる自覚を学んで頂くのは如何でしょう?』

そんな連絡を颯から直々にされてしまったおじいは、一も二もなく首を縦に振った。なんたって相手は日本一の財閥、私はそこへもらわれるために十年以上教育をされてきた身なのだから。

それなのに、現状『花嫁失格』と遠まわしに言われ、矯正が必要だと評されてしまったのだ。おじいは『孫娘の教育が至らず申し訳ない』と平伏叩頭する勢いだし、お父さんは『情けない……!』と大げさに嘆くし、藤波に至っては発熱した上、『私の不徳の致すところです』と危うく辞職してしまうところだった。

しかし、颯の正体を知っている私だけはギリギリと奥歯を噛みしめる。ヤツは立場に物を言わせ、本気で私を従順に躾け直すつもりだ。あのストーカーイヤミめ……!
 
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