強引上司と過保護な社内恋愛!?
6. きまぐれなトラ
「今日は遅いですねえ、泉さん」

加奈ちゃんが小首を傾げると、長い髪がサラリと揺れた。

「おはよう…」

今日も朝から可愛らしい加奈ちゃんとは対照的に、むくみまくった寝不足全開の顔で出社する。

「あら、酷い顔」

加奈ちゃんも私の顔を一目見るなり、眉を顰める。

「昨日はちょっと飲みすぎちゃって…」

私はへへ、っと力なく笑う。

加奈ちゃんは鞄をゴソゴソあさり、小さな丸型のケースを取り出した。

「これアイジェルです。メンソールが効いて浮腫みが取れますよ」

「ありがとう」

キラキラ女子の気遣いに思わずジンとする。

「昨日は遅くまで飲んでいたんですか?」

「いや、レセプションは9:00前に切り上げたよ」

「あら、意外と早く帰ったんですね」

「私は飲み足りなかったから、その後近所のバーに飲みに行ったんだ」

ああ、と言って加奈ちゃんは意味深な笑みを浮かべる。

「それでどうだったんですか?歳下の彼とは?」

加奈ちゃんは目を輝かせてジリジリ間合いを詰めてくる。

「昨日は…別になにもない」

いつも、別になにもないんだけどね。

まったー!と言って加奈ちゃんは私の肩をバシバシ叩く。

小柄で華奢な割には案外力が強い。

「そんな寝不足な顔して何もないとは言わせませよぉぉ!」

そして興奮して声もデカイ。
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