ピュア・ラブ

3

掃除好きな私は、大掃除だからと言って、特別に大がかりな掃除をしない。毎日ちょこちょこと掃除をしているお蔭で、いつもきれいな状態だ。
子供の頃食べられなかったお菓子が、私の大好物だ。
寒がりでもある私は、外に出るのが億劫で、ネットスーパーや、食材の通販をフル活用して、食料品のほか、お菓子を沢山買い込んだ。
食べてもあまり太らない体質らしく、お菓子とケーキをたくさん食べても、気にするほど、太らない。これは本当にありがたい。
今度は、ホテルのケーキバイキングにでも行ってみたいと思っている。
クリスマスが過ぎ、私は、橘君からもらったシーサーのストラップを家の鍵につけた。
小さな鈴がついていて、とてもいい。
今、私は好きな物に囲まれて暮らしている。お金が自由に使えるとはすばらしいことだ。
好きな物を好きなだけ。もちろん、節約は当たり前だ。家計簿もきちんとつけている。
今、レシートを見て、その家計簿をつけているが、今月はあの人たちに持って行かれた金額が多かった。
すでに両親にとって、私は、子供ではなく、銀行だ。
年末だから仕方がない。それに、私の中で絶縁に向けてカウントダウンは始まっている。
「一人で育ったような顔をするな」
いつでもそう言われてきた。だから私は、黙ってお金を渡す。それも一生のことじゃない。我慢強さだけは誰にも負けない、今は、我慢だ。
両親とは離れたところに住もうと思って、この土地に決めたが、わざわざ家から電車で、一時間以上もかけて金をせびりに来るとは思いもしなかった。本当にがめつい。
自分の人生を悲観ばかりしていられない。
モモが来てから、私は、野良犬のような人生と少しずつさよならをしている。何をするにでもどうでもいいと思っていたが、モモを相手に笑い、話しをする。その内モモが会話をし出すのではないかと思う程だ。
愛くるしい感情も湧く。少し様子がおかしいと心配な気持ちにもなる。玄関に迎えに来てくれれば、嬉しさに涙がでそうになる。
私の身体には、赤い血は流れていないのだと思っていたが、モモのお陰で、喜怒哀楽を知る。
でも、モモだけじゃないことも私は知っている。
橘君だ。面倒だ、嫌だ、と煙たがっていたが、ほんの少しだけ、友達もいいものだと思うようになった。

「バーゲンで洋服も欲しいし、しょうがないボーナスを少し使おう」

ボーナスは一切手を付けず生活していた。
毎月の給料で暮らせるのだから、ボーナスを使わずとも暮らせる。
今月はいつも出費しない品目が家計簿に記載される。
橘君へのお礼だ。それはとても必要なものだったから、仕方がない。
橘君の家でもある「たちばな動物病院」は27日までの診察だと言っていた。
大みそかである今日は、どうしているだろう。
初詣を行く約束をしているが、どうするのだろう。まあ、別に行かなくなっても構わないが、連絡をした方がいいのか、それとも待っていればいいのか分からない。
私から連絡をすれば、催促をしているようで、なんだか嫌だ。
クリスマスを境に、橘君はメールをくれるようになった。
でもそれは、橘君らしく、私が返信の負担を減らせるように気を配った文面だった。
自分の言いたいことだけを送ってきて、私からは返答を求めない。
メールのやり取りを初めてする私は、とても有難かった。
炬燵で、モモと年末の番組をチャンネルザッピングしながら観ている。
テーブルの上には、お菓子が沢山ある。
モモもかわいそうなので、肥満にならない様に日頃は控えているおやつを一緒に食べていた。
歌番組をみながら一緒に歌い、お笑い番組をみながら笑った。
すると、私の携帯から、呼び出しの音が鳴った。
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