抜き差しならない社長の事情 【完】
紫月
「お待ちしておりました」
蒼太にエスコートされながら、案内された席に着いてくと、
そこは宝石のように輝く夜景が見下ろせる席だった。
「うわー…… 綺麗」
「気に入った?」
「うん!」
うれしそうに頷く紫月を見て、
クスッと笑った蒼太も、満足そうに頷いた。
『今日はメニューも何もかも全部ヒミツ、俺に任せて』
と言われていたので、
席についても紫月はメニューを開かない。
向かいの席の蒼太は、
ウェイター相手にワインの注文をしていて、
その様子を感慨深げに見つめていた紫月は、
「蒼太、すごく大人に見える」
しみじみとそう言って、眩しそうに目を細めた。