抜き差しならない社長の事情 【完】
恋は叶って
今はこうして肩を寄せ合い、
好きだよと言ってもらえるけれども、
それは自分から告白したからにすぎず、そう思うと少し哀しかった。
何度目かのデートの今日、食事を終えて向かうのは多分――
はじめて行く神田のマンション……
――自分はあんな仕事をしていたし
もしかしたら、軽い女だと思われてるかもしれない
だからこそ少し冷たくしてみたいと思うのに
部屋には行かないなんて、言えるはずもなく
だから
はじめて入った恋人の部屋で
「曄、曄から言わせちゃったから
俺の気持ち、どう伝えたらわかってもらえるか ずっと考えたんだ
いくらなんでも早いと思ったけど、でも
これが俺の気持ちなんだよ」
そう言って、指輪が入ったリングケースと
サイン済みの婚姻届を、スッと目の間に出された時は――
曄は子供のように泣いてしまった。