リナリア

ねぇ、君は気付いてる？

＊　＊　＊

「知春。ソースついてるよ？」
「え？」
「ここ、ほっぺ。」
「あー…。ほんとだ。」

「なーおちゃん！」
「はい？」
「気になる？知春と椋花。」
「え？あ、いや、仲がいいんだなぁと。というか知春さんにちゃんと普通の友達がいたんだなって。」
「はは。いるっしょ。普通にいい奴なんだから。」
「そうですね。…普通にいい奴、って…それはきっと一緒にいたから言えることですね。」
「一緒にいたのは、俺より椋花のほうがずっと長いんだけどね。」
「え？」

「あーあ、名桜がとられちゃってるぞー？」
「…別にとられるとかじゃねーし。」
「強がり！」

　蒼の頬に、七海は人差し指を当てた。

「なんだよ。」
「名桜、可愛くなったと思うよ。プロの力だけじゃなくて、名桜の元々もつ力って意味で。」
「……。」

　蒼は押し黙ってしまった。七海はわかっていて続けた。

「好きなことを好きだと言えて、極めてて、上手くなって。名桜ってそういうとこ、ずっと強かったけど、ますます強くなったよね。だからかっこいいんだと思う。」
「…んなことは、わかってんだよ。」
「それならいいんだ。」
「お前こそ、俺の心配なんかしてんじゃねーよ。せっかく可愛い格好してんのに。」
「…おまけみたいに可愛いとか、言わなくていいし。」
「んだよ、可愛くねーな。」