花京院家の愛玩人形


「紫信…」


信太郎は呟いた。

が…

ハイ、ガン無視ー

『アレ』は、そもそも信太郎なんて眼中にないようだし。

紫乃はジタバタ且つアップアップだし。

要はお風呂でまったりな風情だし…

って、そんな場合じゃねーンだよ。
いい加減にしとけ、コラ。


「おい、花京院 要」


やはり小さく、けれどしっかりとした声音で、信太郎は初めて要の名を呼んだ。

すると、心から鬱陶しそうに、彼は薄く目を開く。


「今更ジャマとか、勘弁してどーぞ」


ぅわぁ…

本気だわ、コイツ。
色々と本気でキテるわ。

だが、冷静。

ナニカを予感したのか、要の声は信太郎に合わせるように小さい。

その様子…

まだ諦めたわけじゃないンだろう?
腕の中に収めた大切なモノを救えるすべが万が一にもあるのならと、神経を研ぎ澄まして小さな切っ掛けを待っていたンだろう?

だが、残念ながら『救う』のは貴様の仕事じゃない。

貴様の出番は、その後だ。


「私の娘を…頼んだぞ」


奥歯を噛みしめて低く唸った信太郎は…

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