白衣とエプロン 恋は診療時間外に
「可愛がって下さい」
カトレア耳鼻咽喉科クリニックの休診日は、木曜と日曜祝日。

世間一般と同じような連休は、お盆と年末年始しかない。

というわけで――ゴールデンウィーク中であっても、土曜の診療は通常通りだ。

今日は四月三十日の土曜日。

木曜が休診日で金曜日が祝日だったので、二連休明けの出勤になる。

少し早めに出たつもりだったけど、クリニックにつくと既に鍵はあいていて、看護師の唐木(からき)さんが出勤していた。

「おはようございます」

「おはよう。いつも早いわね、清水さんは」

「唐木さんこそ」

スタッフルームの奥にある更衣室で挨拶を交わしつつ身支度をする。

といっても、私は唐木さんのようなナース服は着ないので楽チンだ。

うちのクリニックは、事務スタッフはナース服を着ないルールになっている。

看護師は白のナース服を、臨床検査技師は水色のナース服を着るけれど、事務スタッフは私服の上にエプロンだ。

エプロンはナース用として販売されているもので、ちなみに色はミントグリーン。

福山さんなんかはナース服を着られないのを残念がっているようだけど、私はそうでもない。

昼休みに外出するときも、エプロンなら外すだけで着替えの手間がないし。

それに、診察室でナース服を着ていると、患者さんから有資格者と勘違いされても仕方がない。

それが面倒でもあり怖くもある。

だから、エプロンのほうが仕事がしやすいと思うのだ。

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