溺れる恋は藁をも掴む
恋に落ちる時
 ーーあれからーー

 駅まで誠治さんと歩いた。

 「あのね、
俺、悪気ないんだけど、聞いてくれる?」

 「なんですか?」

 「高校生の妹が居るんだ」

 「はい」

 「どうやら沢口が言っていた、クマのキャラクターが大好きで、グッズを集めてんだよね。
東京限定のグッズがあるらしくてさ、頼まれたんだけど、ショップに入りづらくてね…

 あっ、別に華ちゃんに似てるとかじゃないよ!

 でもさ、『これだよ!これ!お兄ちゃん』って、画像まで送ってきてさ……

 へぇーなかなか可愛いじゃんって思ったよ。
癒し系だよね」


 「よく似てるって言われるんです。
体形なんでしょうけど」


「あっ、決して華ちゃんに嫌な思いさせる為に言ったわけじゃなく、俺も可愛いと思ったんだ。
田舎じゃあ、あまり売ってないらしく、妹が欲しがるのも分かる気がするっていうか…」

 「大丈夫ですよ!
気にしないで下さい。
黒崎さんの田舎はどこなんですか?」

 「宮城の仙台。
仙台駅から仙石線って電車に乗って、暫く行ったとこ」

 「仙台なら伊達政宗に牛タン」

 「そそ!」

「そうなんだぁー」

 「少し元気になれたかな?
ごめんね……
あんまり気の利いた話出来なくて」

 「有難う御座います。
元気が戻りつつあります」

 「少しでも元気になれたなら、良かった。
笑顔になってね。
華ちゃんは笑っていた方が似合うよ」







 駅までの道のりは、あっという間だった。

 誠治さんにお礼を言って、その日は別れた。
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