じれったい
4・いい子と悪い子の境界線
線香の強い匂いに、頭の中がおかしくなりそうだった。

花に囲まれた遺影の中で、桜をバックにしたあの人が微笑んでいた。

祭壇の前で、彼らは醜い争いを繰り広げていた。

「どうするんだよ…」

「私のところは無理よ!

主人の給料がまた下がって、自分たちだけでも食べて行くのに精いっぱいなんだから!」

「俺のところも無理だよ!

子供が2人いて手がいっぱいなのに、もう1人なんて…」

「私だって嫌よ!

あの女の子供なんか引き取りたくないわ!」

「そうだな…。

何を言われるかたまったもんじゃない…」

やめてよ…!

人が亡くなったって言うのに、何でこんな時に争わなきゃいけないの?

そんなにも、“私”と言う荷物を引き取るのが嫌なの…?
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