四門メグへの手紙~魔女の瞳番外編~
二枚目
ガサガサと、乾いた音が夜の公園に響いていました。

茂みの中から出てきたのは男でした。

この寒空に、タンクトップ一枚だけ。

全身黒ずくめの、多分年齢は私と同じくらいの青年。

もっとも、それは見た目だけかもしれません。

魔物は外見だけならどうとでも取り繕えると教わりましたよね。

『変化』の魔術で人間を惑わすのは、魔物の常套手段だと。

ましてや目の前の彼が、私の睨んだ通りの魔物ならば、人間態の時の姿なんて何の参考にもなりません。

「こんな夜更けに一人歩きたぁ、お嬢ちゃん、自分が女の身だって自覚はあるか?」

伸び放題に伸びた髪の毛を無造作に掻きながら、男は笑みを浮かべていました。

野性的な印象を受ける、ニヤリとした笑み。

私には、獲物を見つけた獣が牙を剥いたように見えました。

「まぁいいや。どうせ『食う』なら男より女の方が肉も柔らかくて美味い。それに」

男はスンスンと鼻を鳴らします。

「魔力持ちでこんな上玉ときている。晩飯としては久々に豪勢なもんだ」

「!」

驚きました。

この人、私が魔力を持っている事を知っていたんです。

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