きみのためのプレゼント
『恋』に気づいた日
「八月にある陸上競技大会を見に来てほしいの」


岡部さん、もとい、ハルと友達になった私は、保健室登校をやめた。ハルが「さあちゃんの両足になる」と言ってくれたからだ。


『さあちゃん』なんて親にも呼ばれたことがなくて、くすぐったいやら恥ずかしいやら。でも、ハルが偽りの笑顔じゃなく、本当に嬉しそうに笑うから、さあちゃんでもいい。


ハルとも最初は呼べなかったけれど、呼んでほしそうにしている姿があまりにも可愛くて、『ハル』と呼べるようになったんだ。


最初は、私の隣に、ハルがいることにクラスメイトたちも困惑をしていたし、ハルのいたグループの人たちは嫌そうにしていた。


「ねえねえ、藤野さんと仲良くなったんならもううちらのグループ抜けてくれないかな?実はさ、岡部さんって話合わないし、一緒にいても楽しくなかったんだよね」


元々、そのグループの子たちは、ハルのことをそんなに大事には思っていなかったかもしれない。だけど、堂々とそんなことを言う彼女たちに苛立ちが募る。

でも、ハルはそんな私とは対照的にニコニコと笑みを浮かべて、こう言葉を放った。


「私、さあちゃんとこれから一緒にいる。私だって、嫌々グループにいるのもうしんどいし、だからグループ抜けるね」


ハルの言葉に、彼女たちは、少し敵意をむき出しにしていたけれど、元々目立つ人たちじゃなく、自分たちの殻に閉じこもるタイプの人たちだったからボソボソと陰口は言っても、直接的に何かをしてくるようなことはなかった。
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