小さな恋、集めました 【学園編・1ページの短編集】
幼なじみ・悠真と七夕の夜、屋上
 夜の屋上。あたしは幼なじみの悠真と並んで座って、夜空を見上げていた。
「あれがこと座のベガだね。織り姫星って言われてる。で、あっちのがわし座のアルタイル。彦星だよ」
 悠真が夜空を指さしながら言った。でも、明るい都会の夜では星は数えるほどしか見えない。
「天の川って、あたし、ちゃんと見たことないんだ」
 あたしのつぶやきに悠真が答える。
「美希に見せてあげたいな、一面の星空」
「うん、見てみたい」
 できれば悠真と一緒に。でも、悠真はあたしの気持ちなんて気づいてないだろうけど。
「俺、天文学者になりたいんだ。太陽系の外にある地球のような惑星を見つけたい」
「悠真は……ずっと遠くばかり見てるんだね」
 寂しい気分になってチラッと右側を見たら、悠真もあたしを見ていた。
「そんなことないよ。一番大切なものはすぐ近くにあるって知ってる」
「すぐ近くって……?」
 ドキンとして見返したら、悠真の瞳が小さく輝いた。
「美希だよ」
 悠真が左手を伸ばしてあたしの右手をキュッと握った。

【了】
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