雨虹~傘を持たない僕達は果てない空に雨上がりの虹を見た~
ある日のファミレスで男子は妄想した
 六月に入って二週間ほど経ったが、ほとんど雨は降っていない。梅雨明けは七月後半になりそうだという気象庁の予報が発表されていた。

 新太がライブハウスで一目惚れした眼帯女子は、なかなか見つからなかった。二年生の女子は大体顔は知っているので、おそらく一年生か三年生。しかし自分より年上には見えなかったため、一年生だろうというのが、新太の推理だ。

 今日はバイトだから来るなと言う帆鷹に、新太はクラスの数人を連れてファミレスに押しかけるつもりでいる。


「あーあ、あの子ホントにエビ高なのかな……」


 新太の気弱なつぶやきに、すかさず帆鷹が突っ込んだ。


「自分でそうだって言ってなかったっけ?」


「言ったけどさ。本人の口から聞いた訳じゃねーし」


「はぁ? んじゃ他校かもしんねーじゃん」


 もっともな帆鷹の指摘に、新太は口をつぐんでしまう。確かにそうだ。エビ高という言葉に反応したからといって彼女もそうだというのは、勝手な思い込みでしかない。
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