ラティアの月光宝花

女王誕生

「誰?!誰なの?!」

神殿の入り口にはヨルマを待機させている。

ヨルマが唸り声のひとつも立てず、見知らぬ人間を通すなどセシーリアには考えられなかった。

「イイ男になりすぎて分からないか?」

イイ男に…なりすぎて…?

わからない。私と……会ったことがあるの?

目まぐるしく考えるも、セシーリアには男の記憶が全くない。

やがて男はゆっくりと神殿の中へ足を踏み入れた。

「セシーリア。帰ってきたんだ。お前を守りに」

「っ……!」

嘘。嘘でしょう。

近付くにつれ、徐々に男の顔がハッキリと見えてくる。

あのあどけなかった顔は男らしく変貌していたが、太陽の光を宿したような榛の瞳は、セシーリアの記憶の中のものと同じだった。

ああ、シーグル。あなたなのね…!

逞しくなったシーグルの姿に、再び涙が溢れる。

「セシーリア」

「シー…グルッ」

やっと、やっと会えた……!

「バカ……!シーグルのバカ!遅いのよ!なんでもっと早く帰ってきてくれなかったの?!シーグルのバカ!」

オリビエよりも少しだけ濃い榛色の瞳。

どれだけ会いたかった事か。

「シーグル……シーグル!会いたかった!」
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