妻に、母に、そして家族になる
●聖なる夜に

優しい幼馴染

お酒が飲めない私にとって、バーはあまり縁の無い場所。

そんな私が今いる場所は、都内にある高級ホテルの最上階にあるバー。

東京の夜景を見下ろせるこの店は、売りである夜景の美しさを堪能できるように、店全体が薄暗くしてある。

静かでオシャレな雰囲気の店だ。

そんな東京の摩天楼を眺められるオシャレなバーに

「はぁぁぁぁぁ!?バツイチの男と同棲してんの!?」

幼馴染の声が響き渡り、周りにいたお客さんやバーテンダーの視線が痛い程集まってくる。

「ちょちょっと!声が大きいよ」

そう嗜めるように言うと、幼馴染は「ヤバッ」と呟き、身を顰めるように前屈みになった。

このおっちょこちょいな面がある幼馴染みの名前は九条佳奈(クジョウ カナ)。

大手化粧品メーカーの社長の娘で、私の幼馴染であり親友でもある。

私達は元々家同士が仲が良くて、年齢も同じだし、小さい頃から姉妹の様に育った。

今日はたまたまこっちに来ることがあって、久しぶりに会うことになったのだ。
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