漂う嫌悪、彷徨う感情。
擾乱を波瀾に導く来訪者。




美紗が帰った後の実家は修羅場だった。

今まで女、子どもどころかオレにさえ手を挙げた事のないオトンが、真琴の頬を引っ叩きながら激怒し、オカンは『一緒に美紗ちゃんに謝りに行こう』と真琴を諭しながら大泣き。 オレは、

「なんで美紗にそんな事したんだよ!! やっていい事と悪い事の区別も出来なかったのか?!! 馬鹿すぎるだろ、オマエ!!」

真琴が何故そんな事をしたのかが、全く理解出来なかった。

「オマエらが悪いんだろうが!!」

オレの質問に逆ギレの妹。 オトンに叩かれた頬がよっぽど痛いのか、頬っぺたを抑えながら泣き喚き散らした。

「お兄ちゃんが私立の中学なんか行くから、ワタシが近所でどんな風に言われてたか分かる?!! 『残念な妹』ってコソコソ陰口叩かれてたのよ!! お父さんもお母さんも『勇太、勇太』ってお兄ちゃんばっかり依怙贔屓してるから、ワタシがどんな事をしていたか気付きもしなかったのよ!!」

そんな真琴が開き直りながら責任転嫁をする。
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