婚前同居~イジワル御曹司とひとつ屋根の下~
彼の甘くて優しい口封じ
気をとり直して迎えた週明け月曜日。
いつもより一時間早く起きて、気合を入れて朝ごはんの支度をしていると、寝起きの樹さんが部屋から出てくるのが見えた。


昨夜のことを思い出し、さすがに一瞬ドキッと胸が跳ねてしまうのは否めないけれど……。


「お、おはようございます!」


朝から元気な挨拶で、仕切り直し。
なのにどこまでもつれない樹さんは、寝癖のついた髪を掻き上げながら、チラッと私を見遣っただけ。


返ってきたのは挨拶じゃなく溜め息。
そのまま大欠伸しながらカウンターの前を通り過ぎ、洗面所に向かってしまう。


広い背中を見送って、一度しょんぼりと肩を落とす。
でもすぐに自分を鼓舞するように、両頬をパチンと手で叩いた。


顔を洗いさっきより幾分スッキリした顔で戻ってきた樹さんに呼びかけて、今度はなんとかその足を止めることに成功する。


「樹さん、朝は洋食派ですか? それとも和食? あ、今日は洋食なんですけど、よかったら一緒に……」


ハムサラダとスクランブルエッグ、ウインナーという、ホテルの朝食っぽいワンプレートをカウンターの上にのせながら、笑顔で訊ねる私を、


「朝は抜く派」


その一言でシレッと遮り、樹さんはさっさと自分の部屋に戻ってしまう。
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