次期社長と甘キュン!?お試し結婚
「はじめまして、三日月晶子(みかげしょうこ)です」

 それ以上の言葉が出ないでいると、叔母が話を継いでくれた。

「宝木会長のお加減はいかがですか?」

「そこまで心配する必要はありませんよ。僕も久々に帰国して驚きましたが、もう年も年ですし、長年の無理もあったんでしょう。この機会にしばらく療養できると喜んでいました。今日もお目にかかれなくて残念だと」

「それはそれはご丁寧に。でも、直人さんがしっかりされているから会長も安心ですね」

 お約束のやりとりを交わしながら微笑む二人を見る。叔母から事前に聞いた話。彼の祖父、宝木忠光(ただみつ)は代々続く旧家の出であり、彼の代に貿易事業で一旗揚げたらしい。

 私の勤める会社を本社に、今では手広い分野にまで進出して、多くの企業などを傘下に置いているというのは、入社当事に聞いていたような、聞いていなかったような。

 そして、どうしてこんなことになっているのかというと、

「それにしても、お忙しいのに今日はわざわざすみません」

「いえ、申し出たのはこちらですから。今日子さんのお孫さんなら是非、と祖父が強く希望していたので」

 そこで彼の視線が私の方に向いて、妙な居心地の悪さを感じた。

 そう、この着物の持ち主でもあり、私の祖母でもある三日月今日子(きょうこ)と、彼の祖父との繋がりでこのような場が設けられたのである。ちなみに祖母は既に鬼籍に入っているのだが。

「孫娘は晶子ともう一人、妹がいるんですが、晶子の方が直人さんと年も近いと思いまして」

 真実も言っているが、すべてではない。なんとも苦しい言い訳だな、と思いながら私は伏し目がちになった。

 祖母には娘が二人いて、それが麻子叔母と私の母、明子(あきこ)だ。麻子叔母は嫁いで苗字が違うが息子が二人いる。そして父は母と結婚して母方の姓を名乗っているのだ。
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