願いが叶ったその時…




?「百合」


「っ」



気が付くと目の前には昨日
私をオークションで買った男が
肩を支えながら顔をのぞき込んでいた



?「大丈夫か?震えてる…顔色も悪いぞ」


「あ…」



言葉が出てこない…
早くこの人から離れなきゃ…
この人と関わったら駄目なんだ…
逃げないと…



「逃げるな」



下を向いていた私は顔を上げた。


今までそんな事を言った人はいなかった。
目を合わせれば殴られて、
ある人には同情されて…
それの繰り返しだったから…


その言葉を言われた瞬間、
私の目には涙がたまっていた。
嬉しかったんだ…
そう言ってくれる人がいたことに…

だけど、それと同時に怖くも思った…
自分の心が見透かされて、怖い



「私は…逃げてなんかない!」


      バシッ



肩においてあった男の手を
私は振り払った。




?「すまない、気に障ったか?」



どうして貴方が謝るの?
ただ私を気にかけてくれただけなのに
どうして私を責めてこないの?
悪いのは全部…私なのに…



?「百合、ひとまず俺の家に来い。
  行く宛もないだろ?」



この人の言うとおりだ。
身内は私を気味悪がって
家に入れようとしない…
お母さんは私が生まれたと同時に死んでいる。


あぁ…こうして改めて考えると
私の帰る場所なんて…
この世にはどこにもないんだ…



?「唇をかむな…血が出る」


強くかみすぎていた私の唇に
男の人がそっと触ってくる。
普段なら振り払っているのに…
どうしてだろう…この人は、平気だ



?「…そういえば、名乗ってなかったな
  俺は草薙夏風だ…よろしくな、百合」


「え、あ…」


夏「無理をしなくていい…ゆっくり…な?」



優しく乗せられたその手は
とても、暖かかった…


かえる準備をしていると
ドアから男2人が入ってきた。
昨日、この人の隣にいた人だったと思う。



椿「うわぁ、夏風が介護してるぅ
  あ、初めまして百合ちゃん
  神谷椿だよ。よろしくね?
  因みにこいつは榊光琉
  俺らは夏風の側近だから何でも言って?」



側近…傍にいて守ってくれる人…かな?
この人は有名人なのか
そうだよね…あんな所にいるし、
5億なんてお金が出せるんだもんね…



   





    
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