別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
部長と奏人は打ち合わせをするらしく、課長と主任も連れて、会議室に入って行った。

会議室の扉が閉まると、私の周りは一気に騒がしくなる。

若くてイケメンの奏人の事が気になって仕方ないみたいだ。

私はそれどころではなく、とにかく心を落ち着けようと、みんなの輪には加わらず席に座り、家から持参したお茶を飲む。

ああ、心臓がドキドキする。
奏人が同僚になってしまったなんて、まだ信じられない。

この先どうすればいいんだろう。
奏人と一緒に働くなんて絶対に嫌だけど、仕事は簡単には辞められないし……憂鬱な気持ちでお茶を飲んでいると、ザワザワしていた中で、一際大きな声が聞こえて来た。

「あの人、社長の御子息なんでしょ?」
「!……」

衝撃の発言に思わずお茶を吹き出しそうになった。
なんとか耐えて、むせながら、恐る恐る声の方に顔を向ける。

そこでは社内のあらゆる情報に詳しい、社歴二十年のベテラン女性社員松島さんが、生き生きとした表情を浮かべて語っていた。

「中途採用社員の苗字が社長と同じ北条だって聞いて調べたのよ。北条って苗字はそういないじゃない? 」

「えー信じられない! 社長と全然似てないじゃないですか!」

「本当に。凄いイケメンだったよね! 彼、独身かな?」

……異常に盛り上がっている。

そりゃあ、そうだよね。
イケメンが配属になっただけでも、それなりに話題になるのに、加えて社長の息子だもんね。

私は全く盛り上がれないけどね!


奏人がうちの社長の息子だったなんて思いもしなかった。
北条って聞いても、全然リンクしなかった。
普段、社長の苗字なんて気にしていなかったし。

ここは奏人の家が経営する会社なんだ。

私がここで働いている事を知っていたのに、奏人はずっと黙ってたんだ。

信じられない!
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