別れたいのに愛おしい~冷徹御曹司の揺るぎない独占愛~
奏人は私の事をどれだけ騙していたんだろう。

私はこれからも、こうやって驚きショックを受ける真実を次々と知る事になるのかもしれない。

あまりに先行き不安で、果てしなく気分が沈んで行く。

私……奏人の居るこの会社で、この先やっていけるのかな?

社長の息子らしい奏人がこの会社で働くのは当然なのかもしれないけど、同じ部署だなんて、本当についてない。

……って言うか、どんな顔して過ごせって言うわけ⁈
なんでわざわざ私と同じ部署に来るわけ?

海外営業部とか、開発部とか、社長の息子に相応しそうな活気に溢れた部なんて他にいくらだって有るのに!

イライラとしながら、奏人が座る予定の席に目を向ける。


国内営業部には約三十人の社員が居る。

席は横に広がるフロアの中で五つの島に分かれた配置になっていて、出入り口から見て一番右端の島に私の席がある。

奏人の席は私とは対角線上の、環境の良い窓側の席。

不幸中の幸いなのか、国内営業部の中ではお互い一番遠く離れている席で、仕事中の雑談なんて絶対に起きない程距離が有る。

仕事の面でもチームが違うから、それほど接点は無いだろうし、なんとか耐えられるのかな……。

騙しただけでは収まらず、別れた後も振り回す奏人に苛立ちを感じながらも、内線電話が鳴った事をキッカケに、私は仕事に取り掛かった。
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