黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う

隻眼の騎士


私は兄様の静止の声を振り切って挨拶もそこそこに退出した。

周りの視線を考えたら、長居なんてできるわけなかったから。

後を追うようにメイドが1人ついてきたけれど、首を振って目で追いやると、申し訳程度に頭を下げて足早に立ち去っていった。

彼女は私がちゃんと塔に帰るかどうか見張るためによこされたのだろうが、私が要らないと言ったなら言い訳もできるというものだろう。

私とふたりきりになんか誰もなりたくないだろうし、私も、塔には今は帰りたくない。

私は塔とは反対側に足を向けた。

人通りの少ない道を進む。ここは普段誰も通らない。

先には、庭園しかないからだ。

無駄に広い廊下に自分の足音だけが響くのを聞きながら、私はそっとまぶたに触れた。

その下にある、金色の、瞳に。



しばらく歩くと、急に視界が開けた。花の良い匂いにくらくらする。

城の庭園だ。ただここを訪れる人はほとんどおらず、この国の人間には特に花を愛でる趣味はないようなので、外見と外聞のために作っているだけなのだろうけれど。

・・・でも、私はこの場所が好きだ。誰も来ない秘密の場所。私だけの庭。

植物は平等だ。私がどんなに皆に疎まれようと、この子たちは私を受け入れてくれる。

だから、私はときどき、こっそりこの場所に来る。ここに来て植物たちを愛でれば、少しだけなら、またこのセカイに耐えられる気がするから。

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