黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う

迫る足音


◇*◇

薄暗い塔には灯なんてない。

陽が落ちればそれと共に私は深い闇に沈む。

初夏の陽落ちは意外と早いもので、窓から差し込む光がオレンジに染まり、斜めに傾いたかと思えば、あっという間に黒に閉じ込められる。

くらい、くらい。

私は冷たいベッドの上で、幼子のように膝を抱える。

「くらいよ・・・」

この時間が、1番怖い。

大っ嫌いな、時間。

暗い場所が駄目な訳では無い。

明るかったものが、暗くなるのが、どうしようもなく怖いのだ。

視界が暗く閉ざされるこの瞬間は、まるで、空にまで拒絶されたように感じてしまうから。

空に感情がないことなんてわかっている。自然の摂理に則っているだけだなんて、わかっている。


だけど、毎日絶対に来るこの一瞬が・・・怖い。

私がこの空の色が解らなくなるまで、私のこの生命の灯火が尽きるまで、慣れることは決してないだろう。


「っう、こわいよぉっ・・・」

年端もいかない少女のように、私は声を震わせる。

鼻をすする音が部屋に響く。

・・・それだけ。


私には、父も母もいない。手を差し伸べてくれる家族がいない。

こんなとき、肩を抱き、優しく頭を撫でてくれる人がいない。

だから私は、ずっと、ずっと、子供のまま。

ずっと―――あたたかさを、探している。


今日も私は頬を濡らして、泣き疲れて目を閉じる。

そしてまた明日、薄暗さに、目を開けるのだ。


< 43 / 295 >

この作品をシェア

pagetop